朝日新聞さんの取材と記事

朝日新聞さんの記事2020.3.20

スーパーマーケットが全盛を迎えるまで、食材の購入は八百屋、魚屋、肉屋、
乾物屋などが定番だった。
時とともに減り、とくに乾物屋はわずかだ。

その一つ、柏崎市の今井商店は、中心街から離れた住宅地の一角で
こじんまりした店舗を構える。訪れる客は少なく、食料品店に卸したり、
施設へ届けたりすることが多い。

店を切り盛りするのは、若林奈穂子さん(46)と母親の今井珪子さん(74)。

珪子さんの夫が半世紀前に創業したが、12年前に病死し、後を継いだ。
珪子さんは「今の若い人の多くは乾物からだしをとる方法を知らない」という。

「知らないなら知らしめよう」と、奈穂子さんは知恵をしぼった。

小学校の家庭科の授業に煮干しや昆布をもちこみ、だしの取り方を実演。
子どもが学校で学んだことを家で話せば、若い母親は出来合いのだしでは
味わえないみそ汁に関心をもつ。商工会議所主催のイベントでは、
だしの飲み比べのコーナーをつくった。

地元で伝わる正月料理「カスベ煮」について語り合う「カスベ煮サミット」も仕掛けた。

作り方の基本は、①ガンギエイのカスベを数日かけて水でもどしたあと、
水から煮る②酒を入れ、やわらかくなるまで煮る③砂糖、しょうゆ、みりんで
味付け④煮て冷ますを繰り返して煮詰める。──家ごとに作り方に差があり、
参加者は知る機会のなかった他家の味を堪能した。

ドライな乾物で、ドライな砂漠を潤す──。
そんなコンセプトで中国(※1)の砂漠緑化に協力する事業「乾物カレーの日」
(6月最初の土曜日)にも協力している。

インターネットでも乾物普及に力を入れている。

店のフェイスブックにワニの母子のキャラクター「ワニコとワニオ」が登場し、
パラパラマンガ風に動く。エプロン姿でだしを取る場面もある。

なぜ、ワニ?「みんなで”輪に”なって乾物を楽しもうとの思いと、
今井商店のロゴマークに輪があるから」(奈穂子さん)

ホームページの「3月のおすすめ商品」は新潟の名産車麸。
「ダシ醤油だけで煮るより、色々な具材と煮るとおいしさが増します」と
調理時のこつを伝授。
車麸のプディング、かりんとうのレシピも解説する。

おしゃれな包装の小分け商品も売り出した。阿部由美子さん(57)は、
経営するカフェにこの商品を置いている。
「乾物は伝統的な味を受け継ぐ貴重な食材。数回分の量で外見も
おしゃれなので、若い人に人気がある」

成功の陰に失敗も。
奈穂子さんは行きつけのイタリア料理店のシェフに、佐渡産えご草(※2)を
使ったレシピ開発を頼んだ。いろいろ試作したシェフの最終回答は
「イタリアンでは無理」。
乾物の調理法を伝え、現代風にアレンジする2人の挑戦は、まだまだ続く。


(※1)中国ではなく、内モンゴル地方です。

(※2)イタリア料理店のシェフに頼んだ食材は、「すき昆布」でした~。
生クリームで茹でてみたり?挑戦してくださいましたっ!

乾物屋の今井商店 若林

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